富太郎の日常88 『民法95条(錯誤)』
試験まで、あと44日。素振り・キャッチボールのごとく、日々ひたすら過去問を解く今日この頃です。
若干惰性が入って、これまで間違えたことがない問題をミスって落ち込むこと暫し。 厳しいのぉ!
そんな中、町役場からの『誤送金問題』が、連日マスコミを賑わせています。 実はこの内容、
連日解いている過去問の中に「なんか見たことあるぞ」的なものが・・・。
以下、あくまでも富太郎の知識定着のためで、実在の人物・団体に対して、他意はございません。
遡ること昨年の7月。司法書士試験午前の部、第5問。民法の『錯誤』に関する問題です。
(ア) AのBに対する意思表示が錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の
社会通念に照らし重要なものであり、かつ、Aの重大な過失によるものであった場合には、Aは、Bが
Aに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、錯誤を理由として
その意思表示を取り消すことができない。
答え 誤 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、表意者は原則として意思表示の
取消しをすることができない(民法95条3項柱書)。ただし、相手方が表意者に錯誤があることを知り、
又は、重大な過失によって知らなかったときは、錯誤による意思表示を取消しをすることができる。
(95条3項1号) 95条1項の「錯誤による意思表示の取消し」は善意でかつ過失のない第三者に、
対抗することができない(95条4項)。よって、BがAの意思表示が錯誤によるものであることを知らな
かったとしても、知らなかったことにつき無過失でなければ、AはBに対し、錯誤による取消しを対抗する
ことができる。
(エ) AのBに対する『無償行為』が錯誤を理由に取り消された場合には、その行為に基づく債務の履行
として給付を受けたBは、給付を受けた時にその行為が取り消すことができるものであることを知らなかっ
たときは、その行為によって『現に利益を受けている限度』において、返還の義務を負う。
答え 正 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる(121条)。 そして、
無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けたものは、相手方を現状に復させる義務を負う(121条
の2第1項)。 ただし、無効な『無償行為』に基づく債務の履行として給付を受けたものは、給付を受け
た当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、その行為によって『現に
利益を受けている限度』において、返還の義務を負うにすぎない(121条の2第2項)。
ここで言う『現に利益を受けている限度(現存利益)』というのは、「利益が有形的に現存する場合
だけではなく、制限行為能力者が受けた利益が彼らのために有益に消費されて財産の減少を免れた場合も
含む(判例昭和7.10.26)ため、生活費に充てた場合には、現存利益があるといえますが、遊興費として
消費した場合のように、浪費した場合には、現存利益はありません(判例昭和14.10.26)。
まさに、「ネットカジノ」で擦ってしまえば、現存利益はありません。 未成年者等、失踪宣告取消し、
善意の占有者のケースならばですが。
もう1問。平成29年午前の部、第19問。民法『不当利得』の問題。
(ア) 利得に法律上の原因がないことを善意の受益者が認識した後に、受益者の保持する利益がその
責めに帰すべき事由により消滅した場合は、その受益者の不当利得返還義務の範囲は減少しない。
答え 正 (判例平成3.11.19)
(オ) 金銭をだまし取った者がその金銭で自己の債務を弁済した場合において、債権者がその金銭を
悪意で受領した時は、債権者のその金銭の取得は、金銭をだまし取られたものに対する関係で、不当利得と
なる。
答え 正 悪意又は重大な過失があるときは、当該金銭の取得は法律上の原因を欠き、不当利得となる。
(判例昭和49.9.26)
サラリーマン時代、友人の I さんの部下が誤送金をやって、本社も巻き込んで交渉しても返してもらえ
ず、その部下と I さんと折半で、会社に弁償したという話をIさん本人から聞きました。 金銭的負担も
さることながら、事の後始末の精神的、時間的負担が如何ばかりであったかと、気持ちが重くなりました。
その昔、「ちびまる子ちゃん」のエンディングで、西城秀樹は歌っていました。(『走れ、正直者』)
♪「・・・交差点で100円拾ったよ。 今すぐコレ交番届けよう いつだって オレは正直さ・・・」
相変わらず、問題を解く夢を見て、眠りの浅い
富太郎 昼間は、眠い! 眠い!!
フォト/ 5月19日の日の出 4:50頃
富太郎の「お願い事」の願掛け先は
東の お天道さま(ご来光)
西の 富士さん(山)
「世界平和」「コロナ終息」「試験合格」・・・
補 足
司法書士試験は、上記のような(ア)~(オ)
の5肢択一問題を午前35問、午後35問
(プラス午後は、記述式を2問)解きます。
択一は1問あたり、2~3分のペース。
まさに『知力・体力・時の運』の世界です。