富太郎の日常 277 『 天国と地獄 』
NHK BS で放映された、黒澤作品『天国と地獄』を観ました。 録画だと、そのままお蔵入りにしそう
だったので、久しぶりにリアルタイムで。 時代劇はいくつか観ていましたが、現代劇は「生きる」をかな
り前に飛ばし観以来、もしかしたら初めてかもしれません(「生きる」を観たのはまだ今よりは若かった頃
なので、今観れば、印象は全く違うのではないでしょうか。 何せ、胃がんでなくなる市役所の課長よりも
ひと回りも年上になってしまっているのですから)。 で、観終わった印象。 世界のクロサワ恐るべし。
正直、俳優さんたちのセリフ回しは、クサイといえばクサイ。 でも、当時(公開、昭和38年)は、
普通だったのでしょう。 ストーリー展開は、アメリカの警察小説が原作で、とてもよくできていました。
(本を読んでみようかと思ったくらい。) そして、出演者の顔ぶれの豪華なこと。 黒澤組って言うんで
すか。 W主演的な、三船敏郎と仲代達也。 犯人役の 山崎努 (NHKが付けたと思われる、最後の出演者
の表示を見るまで、誰だか解らなかった)。 ほとんどセリフのない警察幹部で 志村喬 (「生きる」「七人
の侍」では主演)。 刑事役で、木村功(「七人の侍」同様、若造)、土屋嘉男、名古屋章、その他大勢の
新聞記者役で、千秋実、北村和夫。 町工場の工員役で、東野英治郎。病院の焼却場の火夫で、藤原鎌足。
まだ東海道新幹線は開通しておらず、在来線を走っていた当時の最先端 こだま が重要な役割。 小田原の
手前の「酒匂川の鉄橋」や、「江ノ電」も犯人逮捕に重要な役割を果たしていました。
そして、犯人を追いつめて「いよいよ確保」というちょっと手前で、のっぴきならない電話が架かってき
て、戻ったら、なんということ。 犯人は既に拘置所の中でした。嗚呼。 でも、面白かったぁ。
[敬称略]
〇 三船敏郎 こども(犯人が間違えて運転手の子だった)を誘拐された会社重役(たたき上げ)
会社内の抗争もあり、精神的に追いつめられます。 他の作品のように、颯爽と、あるいは天下無双的な
ヒーローではないのが、ちょっと意外な配役でした。 「七人の侍」の下っ端感からは、だいぶん貫禄が。
三船敏郎は、富太郎的には、役者さんというよりは、『飲んでますか?』のアリナミン(長嶋さんの『セ
コムしてますか?』は、このCMが源流かも。)、『男は黙ってサッポロビール』のCMの印象の方が強烈
です。 長谷川町子さんの「意地悪ばあさん」では、禁酒をしているお父さんに、ばあさんが『飲んでます
か?』とお酒を見せて「負ける俺も悪いにゃ悪い。」と晩酌をさせ、就職面接で何も話さず、最後に「何か
言うことは?」と聞かれて、『男は黙ってサッポロビール』と答えてサッポロに就職したという話が、実し
やかに語られました。 そういえば、お正月の「爆笑、レッドカーペット」で クールポコ が『なぁにぃ、
男は黙って箱根駅伝。 男は黙って箱根駅伝。』とやっていました。 箱根駅伝と言えば、サッポロだぁ。
〇 仲代達也 誘拐事件の指揮を執る刑事部長
1944年に、千田是也さん、小沢栄太郎さん、東野英治郎さん、東山千恵子さん等が立ち上げた『俳優
座』の出身で、1954年の『七人の侍』では、セリフなしの浪人役でしたが、1962年の『椿三十郎』
では、主人公(三船敏郎)の敵役に昇格。 まあ、最後には一瞬で切られてしまう役でしたが・・・。
この作品では非常に有能な警部で、的確な指示で犯人を逮捕。 黒澤作品ではその後『影武者』(勝新
太郎の代役)で、カンヌ国際映画祭のパルムドールを授賞(1980)しました。
昨年の11月にお亡くなりになりましたが、最後まで現役として舞台に立たれた一方で『無名塾』を主催
され、役所広司さん、滝藤賢一さん等、多くの俳優さんを育てられました。 『演劇人』と呼ぶに相応しい
方でした。
〇 山崎努 誘拐犯 病院のインターン
この映画では、最後まで演じているのが 山崎努 とは判らず。 当時26、7歳。 富太郎の 山崎努 は、
「必殺仕事人」の 念仏の鉄 であり、「八つ墓村」の頭に二本懐中電灯を差した殺人鬼であり、伊丹十三作品
の潰れかけた荻窪のラーメン屋の再建を助けるトラックの運転手や、脱税してマルサに追及されるラブホの
経営者であったり。 最近(?)では、山P、堀北真希主演の「クロサギ」の詐欺師業界の黒幕の役なんかが
山崎努 中の 山崎努 だと思います。 まあ、癖の強いこと。 サッポロのCMに出ていたような記憶も。
『天国と地獄』というと、♪「カステラ1番 電話は2番
3時のおやつは・・・」の子熊たちが踊る、文明堂のCM
が思い浮かぶ 富太郎
(あれはカンカンダンスらしいです。 もともとは1850
年代に創られたオペレッタの歌曲で、お姉さんたちがスカート
の裾をヒラヒラさせながら踊る、フレンチカンカンの定番曲。
ロートレックさんに『ムーランルージュ劇場』という作品が
ありました。絵の中でも『天国と地獄』が鳴っているよう。)
フォト/和田誠さんの『お楽しみはこれからた PAR2』
P75 『椿三十郎』の 三船敏郎さん と 仲代達也 さん。
取り上げておきながら、和田さんにしては珍しく「ただ
ひとつぼくが物足りなく思うのは、「用心棒」も「椿三十郎」
も主人公の対決相手の強さ凄さを前もって描いていないとこ
ろで、・・・。三船が強いのはさんざん描いているのだから
仲代の方も目玉ギラギラさせているだけでは、手強い敵だと
いう雰囲気はあっても、まだ押しが足らないと思うのである。」
と手厳しい評価でした。 仲代さん、ちょっと気の毒。
高校時代に、椿 くんというクラスメイトがいて、英語の
先生に、あてられるたびに『椿三十郎』と呼ばれていたのを
思い出しましたよ。
余 談
「朝型人間」にとってちょっと嬉しいのは、朝起きて
テレビをつけたらLIVEで、冬季五輪の表彰式を
やっていてセンターポールに「日の丸」流れる「君が代」。
朝一番で直立不動。 そして鼻歌♪「やったね 全然本気
君に夢中さ・・・」 1日分に余りある元気と勇気を
頂きました。 ありがとう。 頑張れ、ニッポン!!