富太郎のちょこプレ

 

  ★ 2023年7月から2025年8月まで、『ココナラ』のブログに投稿した内容です

 

  順次、追記していく予定です。

 

 今回のお題「夫婦に関する法律」  2025.7.27

  「夫婦別姓」が議論される中、商業登記における『旧氏の併記』等、

 登記関係でもいろいろな改正が行われています。

  また、令和6年に民法(家族法)の改正時期はあり、令和8年の5月までに

 施行されます(時期は未定)。

  今回は、夫婦に関連する法律、判例等をご紹介します。

 (1) 結婚・離婚の意思

  婚姻の意思に関しては、結婚と離婚とでは、最高裁の判例の扱いが異なって

 います。

 ① 結婚 「婚姻の意思は、戸籍の届出をする意思だけでなく、新たに夫婦と

  して共同生活をしようとする意思が必要である。」 (実質意思説)

  ⇒ 偽装結婚は無効です。

  判例『724条1項にいう「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、

  当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する

  意思の合致がない場合を指し、たとえ婚姻の届出自体については当事者間に

  意思の合致があったとしても、それが単に他の目的を達成する方便として


  仮託されたものにすぎないときは、婚姻はその効果を生じない。』

  (最判昭44.10.31)

   ⇒ 例:単に子に嫡出子としての地位を得させるため。

 ② 離婚 「離婚の意思が必要である。離婚の意思は、届出をする意思で

  足りる。」 (形式的意思説)

  ⇒ 生活保護受給継続のための離婚は、有効です。

  判例『夫婦が事実上の婚姻関係を継続しつつ、単に生活扶助を受けるための

  方便として協議離婚の届出をした場合でも、当該届出が真に法律上の婚姻

  関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであるときは、当該協議

  離婚は、その効力を生じる。』  (最判昭57.3.26)

 (2) 夫婦間の財産契約

  民法760条(婚姻費用の分担)「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を
  

   考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」 (法定財産制)

  民法756条(夫婦財産契約の対抗要件)「夫婦が法定財産制と異なる契約を

   したときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の

   承継人及び第三者に対抗することができない。」

    なお、夫婦の一方が相続により取得した財産は「婚姻中自己の名で

   得た財産」であり、夫婦の共有に属する財産とは推定されません。

 (3) 夫婦間の契約の解除

  民法754条(夫婦間の契約の取消権)「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつで

   も、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利

   を害することはできない。」

    判例は『「婚姻中」とは、形式的にも実質的にも婚姻が継続している

   ことを意味し、婚姻関係が実質的に破綻するに至った場合には、754条

   本文の規定によって、夫婦間の契約を取り消すことはできない。』として

   います。  (最判昭42.2.2)

   ⇒ 例:A男は、B女に対し、不動産を贈与したが、その後、A男とB女の

    婚姻関係が破綻するに至った場合には、A男は、当該贈与契約を取り消

    すことができない。

   なお、754条は、令和6年の民法改正で削除されます。


 (4) 日常家事に関する債務の連帯責任

    民法761条「夫婦の一方が日常家事に関して第三者と法律行為をしたとき

   は、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任

   を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、

   この限りではない。」

    判例は『夫婦の一方が本条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を

   超えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎とし

   て一般的に110条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越

   権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常家事に

   関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由があるときに限り、

   同条の趣旨を類推して第三者の保護を図るべきである。』

   としています。 (最判昭44.12.18)

   ⇒ 「Bの妻Aが、Bの実印を無断で使用して、Aを代理人とする旨の

     B名義の委任状を作成した上で、Bの代理人としてB所有の土地を

     Cに売却したという事件の判決です。

    (個人的には、不動産の売買を「日常家事に関する法律行為に属する」

    とは、なかなか信じられないような気がしますが・・・。)


  今回は、以上です。 



 今回のお題「内縁の妻(夫)」 2025.8.10 

 「内縁」は、「婚姻」と何が同じで、何が違うのでしょうか?

  ものの本によれば、「内縁関係」とは『婚姻届』を提出してはいないものの、 

 夫婦としての実質を備えている男女の関係だそうです。

  では、法律上は「何が同じ」で、「何が違う」のか?

 まず、「内縁」に「婚姻」の規定が準用(類推適用)されないものです。

  ❶ 氏の変更 (民法750条)

  ❷ 子の嫡出推定 (民法772条)

  ❸ 配偶者の相続権(民法890条)

 次に、規定が準用(類推適用)されるものです。

  ① 同居・協力・扶助義務 (民法752条)

  ② 日常家事債務の連帯責任(民法761条)

  ③ 婚姻費用分担 

  ⇒ 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻生活から

   生ずる費用を分担する(民法760条)

  ④ 近親者に対する損害の賠償(民法711条) を請求できる。

  これらの規定は、『内縁関係にも類推適用される。』との判例があります。

  (最判昭33.4.11)  

  上記判例では、『当事者の一方が正当な理由なく内縁関係を破棄したときは、

   他方の者は、相手方に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求できる。』

  ことも判示しています。

  ⑤ 財産分与(民法768条) 協議上の離婚(内縁関係解消)をしたもの 

  ただし、『内縁夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合には、

  財産分与に関する規定は類推適用されない。』との判例があります。

  (最判平12.3.10)

  死亡による内縁解消の際に、離婚する場合の制度である「財産分与」を類推適用すると、

 『法が本来予定している(相続)制度」から逸脱するからなのだそうです。

  財産分与に関する「一方の死亡」のケースは、「内縁関係の妻(夫)」にとっては、

  厳しい結論になりますが、同じ死亡のケースでも、不動産の賃貸借に関しては、

  様相が変わります。

 ケース1 「A及びBは内縁関係にあり、甲建物に共に住んでいたが、

  Aは亡くなった。A及びBが住んでいた甲建物が、Aが賃借していた家であり、

 Aに相続人がいない場合は、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった

 同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する(借地借家法36条)

 ので、BはAの有していた『借家権を承継』することができ、退去を拒むことができます。」

 ケース2 「同様の前提で、相続人Cがいるケースでは、内縁の当事者の間には、

 相続権がないので、Aが死亡した場合でも、BはAの有していた借家権を相続により

 承継することはできませんが、Bは、Aの『相続人Cが相続により取得した借家権(注)

 を援用』することにより、甲建物の所有者から  の退去請求を拒むことができます。

 (最判昭42.2.21)

 (注)賃借人の死亡は賃貸借の終了事由ではないので、賃借人が死亡したときは、賃借権は

 相続人承継されます。(民法896条)

  また、相続人Cからの明渡請求、同居拒否等に対しては『権利濫用の法(民法1条3項)』

 により対抗することができす。」 (最判昭39.10.13)

  以上は、建物の賃借人と事実上の夫婦(内縁の当事者)又は養親子関係にある同居者を保護し、

 借家権の承継を認めて「生活の基盤を確保」するためのものであります。

  このような『内縁関係』として保護さるための『夫婦として実質』ありと認められるためには

 (単に一緒に生活しているというだけでは足りず)、

  ① 婚姻の意思~両当事者が夫婦として生活する意思を持っていること

  ② (夫婦としての実態を伴った)共同生活~(一般的には)3年以上の継続的な期間が必要。

  ➂ 法律上の婚姻を妨げる障害がないこと。

  ④ 社会的認知~周囲から夫婦として認識されていること

  が必要と言われています。

   今回は、以上です。